令和2年は年明けから急に浮上(顕在化)してきた新型コロナウイルス感染症(Covid-19)があっという間にパンデミックを引き起こし、1年以上経った今もコロナの収束は見えない状況で、新しい年度を迎えようとしています。皆様におかれまして、お変わりなくお過ごしのことと存じます。新しい年度に当たり、一言ご挨拶させて頂きます。
コロナウイルスに対して、本邦でもやっとワクチン接種が始まったところです。一方、治療法は未だ模索している段階です。今回、我々人類は未だ罹ったことのない感染症に遭遇して初めて、日ごろからの悪い生活習慣を断ち切り、健康に留意してセルフケアに徹することの重要性を身に染みてわかったのではないかと思われます。こうした中で、生体が本来有する自然治癒力を活性化して免疫力を底上げする、統合医療の各種手技・手法にはコロナ予防に関する多くのヒントがあります。そこで当学会では、昨年4月に『Covid-19パンデミックへの提言』として、統合医療学会の各領域の先生方に原稿をお願いしました。HPで閲覧することが出来ますので、一度お目通くだされば幸いです。
一方、緊急事態宣言が発出され、不要不急の外出が制限された結果、我々は生活様式の変更を余儀なくされて随分と不自由になりました。おそらく、今後はコロナ以前の状態に戻ることはなく、“コロナありき”でいかに生活していくかを本気で検討していく必要があります。まさに、意図せずに働き方改革が起こったことになります。我々の関連する委員会などの会議や学会・研究会そのものが現地で開催されることなく、ほとんどがウエブを使ったリモートで行われています。その結果、皆様も最近ではウエブで十分やって行けるのではないかと思っておられるかと存じます。実際、昨年の12月の酒谷先生がされた第24回統合医療学会定期学術集会では完全ウエブでの開催となり無事終了することが出来ました。
さて、統合医療が対象とする各種疾患や病態はがんを中心とした生活習慣病、ストレス(適応障害やPTSDなど)、認知機能障害、ロコモティブ症候群など幅広い領域に及んでいますが、それらに加えて、今後は感染症予防にも力を注ぐ必要があります。いずれにしましても、臨床試験に裏付けられた、エビデンスに基づく統合医療における各種手技・手法を広く一般社会に普及させることが肝要かと存じます。統合医療の目標はQOL向上のために、医療、保健、福祉の三位一体の体制で統合された包括的ケアシステムを構築していく事です。そのために本学会では、統合医療に対して、医療機関を中心とした“医療モデル”とそこから得られた結果を保健、福祉の領域に還元していく“社会モデル”とに分けて検討しています。そしてそれらが相互に交流し連携していくアプローチを考えていきたいと思います。
最後に、今後とも持続可能な健康長寿社会の実現を目指した、我が国独自の統合医療を開発推進して行くべく、皆様のご協力ならびにご支援を引き続きよろしくお願い致します。