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日本の統合医療構想の実現に向けて
~理事長就任挨拶~
日本統合医療学会 理事長 伊藤 壽記

 この度、前仁田新一理事長の後任として、日本統合医療学会の理事長を拝命致しました。本学会の創始者であられる渥美和彦 栄誉学会長ならびに仁田新一 名誉理事長の薫陶を受け、これまでの基本路線を継承しますとともに、更なる発展を遂げるべく奮励努力する所存であります。一言、ご挨拶を申し上げます。
 今、医療が変わろうとしています。7年前の東日本大震災が引き金となり、個々人の価値観や人生観に変容をもたらし、自らの健康は自らで管理しようというセルフケアや予防医療への意識が芽生え、さらにはエネルギーに依存せずに必要に応じてエコロジーのすべ(術)を活用しようという機運が出てまいりました。
 我が国は超高齢社会の到来とともに、疾病の殆どががんを始めとする生活習慣病であり、それらの病態は身体的、心理的、環境的、社会的な要因が相互に関連する“複雑系”です。こうした状況下で、生活習慣病に対して対症療法が主体の近代西洋医学による現行の医療だけでは自ずと限界があり、新たな医療体系の構築が必要です。すなわち、キュア(cure)を目指した、20世紀の「病院完結型」医療から、ケア(care)を目指す、21世紀の「地域完結型」医療へのパラダイムシフトが考えられています。
 そこで、現行の医療と補完代替医療(相補・代替医療)(CAM)を有機的に融合させた統合医療がこれからの医療の方向性を示す一つの医療体系と考えられています。今後深刻な問題である高齢者医療(メタボリック症候群、ロコモティブ症候群、認知症など)や心身ともにアプローチしなければならない大規模災害後の後遺障害などは、保険の枠組みで行われている現行の医療では充分に対処できない領域であり、これらがまさに統合医療に求められるところです。日本政府はこうした状況に鑑み、震災以降、統合医療に対する支援体制が本格的にスタートしています。2012-13年には厚生労働省で「統合医療」の在り方に関する検討会を開催され、統合医療が定義されました。2014年からは、国民に統合医療の正しい情報を発信するデータベース(「統合医療」情報発信サイト)の事業が始まっています。また、2014年に設立された日本医療研究開発機構(A-Med)の枠組みの中で、翌年より統合医療に関する研究助成が始まり、年間1億円の研究費が計上されています。また、2016年には、厚生労働省医政局に統合医療企画調整室が開設されました。
 統合医療の実施にあたり、2つのモデルが考えられています。一つは医療従事者が中心の集学的チーム体制で疾病に対応しようとする医療モデルであり、もう一つは地域のコミュニティが主体となってQOLの向上を目的とした社会モデルであり、これらが相互に連携した新たなコンソーシアムの創生が必要となります。前者は統合医療に関する臨床研究を推し進め、その結果得られたエビデンスを医療の現場や地域のコミュニティに還元していくことが求められています。また、後者では、平常時においては健康寿命の延伸を目指して予防医療やプライマリーケアを推進し、いざ災害などの有事に際しては、迅速に対応するといった両面性を有することが求められています。政府が提案している地域包括ケアでは、統合医療が重要な位置付けになることが期待されるところです。
 最後に、持続可能な健康長寿社会の実現のために、欧米の統合医療的アプローチをそのまま継承するのではなく、我が国の風土に合った日本型の統合医療を開発推進していくことが求められています。

(2018年10月)
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