統合医療における“心身両面からのアプローチ”は、統合医療の本質を理解しようとするときに、重大な意味を持つもののひとつである。しかし、統合医療の意味するものは、心身両面というよりさらに大きな包括性であるであると考えなければ、このセッションにおける論説の真意が理解されない。
1)祈りと医療(阿岸鉄三)では、医療の場において頻繁に利用され、その意味では人気もある祈りが患者の肉体的状態に効果があるとすれば、超心理学的にどう考えるのか、祈りは祈る人自身にこころのやすらぎをもたらす(大脳辺縁系快楽中枢の活性化?)だけなのかという問題がある。これらを医工学的に実証できるのか探ってみると、spiritualityに関係する意味で近接にある(外)気功では、気功の発し手と受け手の間には、脳波上、同調が起きることが知られている。
2)心身医学(中井吉英)では、統合医療の本質は、分析的西洋的思考と包括的東洋思想の統合であると説かれる。近代西洋医学は、病気をbio-medical modelであると捉えてきたのに対して、近年になって提唱されているbio-psycho- social-medical modelでもまだ分析的でないかと疑問を投じている。がんに対する心理療法の効果については、これまでは否定的であったが、がんの自然退縮の個々のケースでは可能性が期待されているとしており、個々例を取り扱うことができなかったのが、これまでの統計的分析手法の欠陥であると考えると、有用性を否定する根拠にはならないのではないかと考える。
3)ヨーガ(木村慧心)では、数千年にわたって肉体・精神・霊性の健やかさを得る手法とされてきたヨーガのがん患者の主にQOLの向上に関するメタ分析結果は、その有用性を示すものであったことが説かれる。
4)アーユルヴェーダ(上馬場和夫)では、まず、アーユルヴェーダの現代的解釈が試みられる。意識=情報が肉体の変化を起こすとするspiritual biotechnologyは、これまで超心理学ではpsychokinesis(念力)として取り上げられてきた問題である。AGEs血管内皮細胞関連問題は、末梢循環障害と関係するものと考えられ未病状態の誘因として大いに関心を持たれる領域である。
ここで示されたアプローチのあるものは、現代日本の通常医療の臨床の場では、広く応用され、その理念が認知されているとは言い難い。臨床的有用性を確認しようにも、従来の統計的分析にもとづくEBMの考え方に整合しないこともある。しかし、それだけの理由で効果の真実が否定されるとするのは、ものごとの理屈として正当でない。
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2/17(金) 13:15-16:15 |
先進技術による統合医療 座長:佐藤信紘・岡田昌義 メッセージを読む |
2/17(金) 16:30-18:00 |
東アジアの補完医療 座長:酒谷薫・後藤修司 ※メッセージは近日掲載予定 |
2/18(土) 9:15-10:45 |
統合医療によるがん治療のモデル 座長:帯津良一・星野惠津夫 メッセージを読む |
2/18(土) 10:45-12:15 |
食事、ビタミン、サプリメント 座長:渡辺昌 メッセージを読む |
2/18(土) 14:00-16:00 |
心身両面からのアプローチ 座長:阿岸鉄三・中井 吉英 メッセージを読む |
2/18(土) 16:15-17:45 |
質の高い延命のためのケア 座長:川嶋みどり・塩田清二 メッセージを読む |
2/18(土) 17:45-18:45 |
先進技術を用いた統合医療 座長:渥美和彦・菊地眞 メッセージを読む |