相補(補完)・代替医療(Complementary and Alternative medicine : CAM)は厳密な定義はないが、一般に近代西洋医学(医療)の領域外のすべての医学や医療の総称である。中国伝統医学、鍼灸、漢方、アーユルヴェーダ、ホメオパシー、アロマセラピー、カイロプラクティック、オステオパシー、整体、マッサージ、食事療法、植物療法、サプリメント、心理療法、芸術療法など幅広い分野の手技・手法などを含み、いわゆる民間療法として知られているものも多くある。
米国では1970年以降、近代西洋医学にもとづいた医療以外を代替医療Alternative medicine、その後相補(補完)・代替医療Complementary and Alternative medicine(CAM) から2000年以降は統合医療 Integrative medicineへとすすんでいる。一方、日本では、1998年に日本代替・相補・伝統医療連合会議(JACT)、2000年には日本統合医療学会(JIM)が設立され、2008年 JACTとJIMが統合されて、現在の本学会、一般社団法人 日本統合医療学会(IMJ)が設立された。
統合医療は医療システムの一つであり、CAMと同一ではない。すなわち、近代西洋医学を前提として、これにCAMや伝統医学等を組み合わせて、更にQOL(Quality of Life:生活の質)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、多職種が協働して行うが、主役はあくまでも医療の受け手である、疾病を抱えた「人」である。そのため、統合医療は、その国の文化や伝統と密接に関連しながら、その国独自の医療システムとして発展している。欧州では個人が医療を選択するという観点から、国の制度下でCAMなどの多元的な選択が可能になっている。例えば、フランスで最も人気があるCAMは、ホメオパシー、鍼灸、アロマセラピー、ハーブなどで、医師がCAMを提供する場合に限り、公的あるいは民間保険が還付される。英国ではホメオパシー病院が名前を統合医療病院と変更するなど、米国同様のCAMから統合医療へと変わってきている。また、キューバはプライマリーケア先進国といえる。キューバでは国の政策として治療 ・予防 ・健康増進 ・ リハビリを目的として、自然伝統医療が近代西洋医学に基づく従来の医療と統合的に実践されている。一方、アジアではその国における伝統医学として中国伝統医学、韓医学、インドのアーユルヴェーダ、タイやベトナムなど独自の伝統医学があり、伝統医療として、近代西洋医学に基づいた従来の医療と統合しておこなわれている。特に、インドでは、伝統医学(アーユルヴェーダ、ホメオパシー、 シッダ、ユナニ、ヨガ、ナチュロパシー)の政府管轄機関として、インド保健家族福祉省(日本の厚生労働省に相当)にAYUSH局が設置されている。
世界保健機関(WHO)は2002年、“WHO Traditional Medicine Strategy 2002-2005“ を作成し、「TM/CAMの国家政策と計画を開発、実施することによりTM/CAM を各国に適応した方法で国の保健制度に組み込むこと、TM/CAMについての知識を拡大させることにより、また規制や品質基準について指導することにより、TM/CAMの安全性、効能および質の向上を推進する」ことを提案した。そして、2003年、WHO総会で加盟国に対して、特に下記の事項の実施を強く促した。その後、2度改定があり、最近では、近代西洋医学に基づく、従来の医療に、伝統医学に基づく医療やCAMの統合に関する“WHO Traditional Medicine Strategy 2014-2023”となっている。