わが国には世界に誇りうる国民皆保険制度があり、現場の医師の献身的努力のもとに、低コストで高レベルの診療が提供されている。しかし癌医療においては、西洋医学的RCTで有用性が証明され保険適用された標準治療までは手厚く面倒を見るが、標準治療が無効となった患者はサジを投げられ、緩和ケア医に紹介され、あるいは自ら新たな治療法を探し求めて、盲目的に玉石混交の補完代替医療(CAM)に頼らざるを得ない状況に置かれている。
一方米国では、標準治療が無効となった後も、「医療へのアクセス法(AMTA1997)」により、主治医は患者の希望に応じて補完代替医療を含む最善の治療を紹介する義務を負う。そのため主治医は真摯に患者の病気の治療に関する情報を収集し、最後まで患者に寄り添うことになる。また国立癌研究所(NCI)は、年間100億円にのぼる予算で、CAMの研究と推進を行ってきた。さらに癌専門病院のほとんどに、補完代替医療の治療部門がおかれている。
わが国ではこのような状況の下に、少数ながら進行癌患者に対する統合医療による治療が試みられている。帯津良一先生は、30年の長きにわたり、多くの進行癌患者に対し、中国の伝統医学(生薬、鍼灸、気功、薬膳)を始めとして、古今東西の様々な治療法を駆使して統合医療を実践してきた。田口淳一先生は、4年前から米国Johns Hopkins大学と提携し、進行癌患者の診療を細胞免疫療法・超高濃度ビタミンC療法・温熱療法・漢方・鍼灸などを駆使して、総力戦で行ってきた。伊藤壽記先生は、米国の統合医療による癌治療の最新テキスト[“Integrative Oncology”(Abraham & Weil編、2009年)、「がんの統合医療」(伊藤壽記・上島悦子監訳、2010年、MEDSI刊)]を邦訳し、エビデンスに基づく統合医療を実践するため、現在大阪大学附属統合医療センターの設立を準備中である。
本セッションでは、これら3名の先生に統合医療による進行癌患者に対する治療モデルを提示して頂き、今後のわが国における進行癌患者に対する統合医療の展開の方向性について考えてみたい。
時間 | |
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2/17(金) 13:15-16:15 |
先進技術による統合医療 座長:佐藤信紘・岡田昌義 メッセージを読む |
2/17(金) 16:30-18:00 |
東アジアの補完医療 座長:酒谷薫・後藤修司 ※メッセージは近日掲載予定 |
2/18(土) 9:15-10:45 |
統合医療によるがん治療のモデル 座長:帯津良一・星野惠津夫 メッセージを読む |
2/18(土) 10:45-12:15 |
食事、ビタミン、サプリメント 座長:渡辺昌 メッセージを読む |
2/18(土) 14:00-16:00 |
心身両面からのアプローチ 座長:阿岸鉄三・中井 吉英 メッセージを読む |
2/18(土) 16:15-17:45 |
質の高い延命のためのケア 座長:川嶋みどり・塩田清二 メッセージを読む |
2/18(土) 17:45-18:45 |
先進技術を用いた統合医療 座長:渥美和彦・菊地眞 メッセージを読む |