「科学的根拠に基づく医療(EBM:evidence based medicine)」とは、できるだけ多くの臨床データに基づいて、統計学的に妥当性のある最新最良の医学知見を用いる医療であり、近代西洋医学ではおおむね定着してきています。
EBMの観点から考えると、伝統医学や相補・代替医療は臨床データに乏しく、ともすれば科学的根拠(エビデンス)がないと誤解されがちです。しかし、現存する伝統医学や相補・代替医療の多くは、数百年から数千年の間に淘汰されてきました。経験として蓄積されたこの歴史こそがまさに科学的根拠を証明しているものといえます。
ただし、近代西洋医学の医薬品のEBMで広く使用されるRCT(ランダム化比較試験)だけでは、伝統医学や相補・代替医療の科学的根拠を研究するには限界があるとの討議が2000年のミュンヘンでの国際会議でなされています。
実際、米国の国立癌研究所(NCI)や国立相補・代替医療センター(NCCAM)でも、RCT研究にそぐわない伝統医学や相補・代替医療は、ベストケースシリーズ(Best Case Series)として取り上げられています。
ベストケースとは、伝統医学や相補・代替医療の実施によって得られた、以下のような様々な症例を集積し、臨床試験実施に向けた情報の収集と基礎資料を提供するものです。
伝統医学や相補・代替医療のEBMでは、有効性や安全性、経済性が症例によって異なる場合が多くなります。今後、伝統医学や相補・代替医療の適応や有効性を検証するためにも広く情報の共有を図り、ベストケースの集積からエビデンスの検証へと繋がる研究体系が望まれています。